東京の染め

江戸更紗

更紗が日本へ伝わったのは室町~桃山時代、南蛮美術の華やかなりしころ。江戸時代末期になると型紙刷り技術に秀でた更紗師により日本独自の美しい更紗が生まれ、江戸更紗の名が広く知れ渡りました。更紗の文様は草花、鳥獣、人物等を図案化したものが多く、エキゾチックな風合いに日本の風土と独特の美意識が加わり発展してきました。生活様式や自然の風景を写し取った生命力を感じさせる柄や、多くの色柄を重ねた文様で深みを楽しめるところが更紗の魅力。普段着として愛らしく、柄によっては大胆に、個性的な着こなしができるのも大きな特徴です。


江戸更紗の着こなし

更紗帯はベースとなる着物の色を替えると全く異なる見栄えに。重くなりがちな黒地の着物も、グラフィカルな模様を重ねればすっきりとクールな印象で着こなすことができます。

爽やかなミントグリーンの着物に、まるで西洋のテキスタイルのような文様の更紗帯を合わせれば、都会的な雰囲気のコーディネートが完成。可愛らしく目を引く柄がスタイル全体の印象を引き締めてくれます。さまざまな場所に気軽に着ていける装いとして重宝します。


遠い異国の文様をまとって

こっくりとした色合いの更紗文様には、独特の艶のある無地感覚の織名古屋帯を合わせて。複雑な柄を引き立てつつ、すっきりとした印象にまとめてくれます。異国情緒溢れる更紗文様を継ぎ合わせるように構成した生地は、江戸時代の人々のシルクロード文化への憧れを思わせるロマンティックな一枚。


素朴な柄の愛らしさが魅力

鳳凰のモチーフを丸紋状にあしらった更紗小紋が、ピンクの地に映え可愛らしい印象。インドから伝来し大流行した唐桟縞を斜めに織り出した名古屋帯や、南蛮船を象った陶器の帯留などが、更紗の持つ素朴な味わいをより深めてくれます。

江戸更紗の制作現場

いくつもの型と色を重ねて染め上げられる美しい更紗柄。簡素な柄であっても20〜30枚もの型が使われています。

かつては多色を用いた地が好まれましたが近年は単色をベースに、華やかな色の重ねが人気。地色とオーダー内容に合わせて他の色づかいも決めていきます。重ねたときの発色の具合を想定しながら、染料を調合し手作業で染め付けていくのは長年の職人の経験があってこそです。

着物のお誂え

今回ご紹介した「東京染小紋」「江戸小紋」「東京無地染」といった染めものは、その色や柄によって印象も用途もさまざま。同じ小紋柄でも色が変わると別物です。

東京都染色工業協同組合の工房では、職人の手により、既存の色柄の組み合わせに限らずオリジナルの色合いや文様を染め上げることもできます。白生地から染めるお誂えは、選択肢が無限にあり、最も自分に似合う色を選ぶことができます。

反物の価格は高価なものばかりではありません。手ごろに購入出来るものも多く、特別な意味を込めた小紋柄を自分へのご褒美に。また、友人や家族のお祝いとして贈っても喜ばれそうです。

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