東京の染め

東京無地染

最も基本の染め付けである無地染。平安時代、仏教の伝来と共に藍と紅花が伝来し、江戸時代になると、紫紺で染めた「江戸紫」が「江戸っ子の粋」としてもてはやされました。現在の東京無地染は染料の進化や生地の高級化に対応しながらも、江戸の色と伝統工芸の技を活かし逸品を生み出しています。控えめで品高い印象の無地染は、紋を入れれば礼装に準じた装いとして、紋がないものは普段着として着ることができます。目上の方へのあいさつやパーティー、稽古事からカジュアルな食事会まで、帯や小物合わせ次第で活躍の場が広いベーシックな染めです。


東京無地染の着こなし

最も品格高い部類とされる「藤鼠」の無地染めも。刺繍半衿をアクセントに軽やかな染め帯を選べば、普段着にも適した装いに。無地だからこそのコーディネートの幅を楽しめます。

「鼠」と名の付く染めは、繊細に染分けられ江戸の人々が特に愛したシックな色合い。なかでも紫がかった「藤鼠」は、着る人を品良くたおやかに見せてくれます。金銀糸を織り込んだ重厚な唐織の袋帯を合わせれば、格式のある場にもふさわしい華やかな着姿となります。


パーティーにも最適な、大人の華やかさ

艶のある霞地紋の生地を上品な栗皮茶に染めて。大胆な菱文様が織り出された黒金の八寸名古屋帯を合わせると大人の晴着姿に。シックなトーンに金の小物が映えるドレス感覚の合わせは、レストランでのウェディングなど、洋装の人の多い場にもなじみます。黒や薄墨色の喪帯を選べば色喪服としても活躍します。


和菓子を思わせる、やわらかな色合い

地紋が織り出された生地を、深みのある老松色に染め上げて。優しい桜色の紐紋様の名古屋帯を合わせると、まるで茶菓子のような色合いのスタイルに。金銀の入った格調高い袋帯を締めてお祝いの席に、茶席には控えめな袋帯や染め名古屋帯を。この無地染も喪帯を合わせて色喪服として着ることができます。

東京無地染の制作現場

無地染は基本的に単色の染めでありながら、地紋や生地の素材によってその質感や印象がさまざま。江戸時代より伝わる色見本を手がかりに、微妙な色の違いを調整しながら染め上げていきます。

素材や染め付ける日の気温や湿度、着物のになったときの着こなし方などを想定し、世にふたつとしてない手作業による染めは贅沢そのもの。長い反物をむらなく一様に美しく仕上げるのは至難の技。シンプルでありながら格式高いとされる所以です。

着物のお誂え

今回ご紹介した「東京染小紋」「江戸小紋」「東京無地染」といった染めものは、その色や柄によって印象も用途もさまざま。同じ小紋柄でも色が変わると別物です。

東京都染色工業協同組合の工房では、職人の手により、既存の色柄の組み合わせに限らずオリジナルの色合いや文様を染め上げることもできます。白生地から染めるお誂えは、選択肢が無限にあり、最も自分に似合う色を選ぶことができます。

反物の価格は高価なものばかりではありません。手ごろに購入出来るものも多く、特別な意味を込めた小紋柄を自分へのご褒美に。また、友人や家族のお祝いとして贈っても喜ばれそうです。

東京の染め